気圧の尾根とは何か?気象予報士が解説!

こんにちは 気象予報士のえいたつです!
今回はよくわからない言葉「気圧の尾根」についてご説明します
よく天気予報で「西から気圧の谷が日本列島に接近し天気が悪くなるでしょう」と聞くことがありますよね、なんだか尾根や谷と聞くと山をイメージすると思います
その通りです!気圧の高低を山で例えています
空気が多いと山になるの?
説明だけだとよくわかりませんが、透明な山をイメージするとなんだかワクワクしますね
では順番にわかりやすくお話しします
気圧の尾根と気圧の谷

出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)
色加筆:筆者
気圧の尾根と気圧の谷は色ペンで描いた線です
尾根と谷は線になります(四角や丸ではありません。必ず直線か曲線になります)
次に気象庁の定義を見てみましょう
気象庁
低圧部と低圧部の間の気圧が高い部分の稜線。
引用:気象庁
(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)

つまり周囲より気圧が高い場所(山頂)を結んだ線が山の稜線(尾根)ということであり、気象学では山に例えて「気圧の尾根」と読んでいます
※気圧の峰という場合もありますが気象庁では使われていない
気圧の谷も同じですね
高圧部と高圧部の間の気圧の低いところ。
引用:気象庁
(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)

気圧の高い場所の間の谷を「気圧の谷」と呼んでいます
さらにイメージしやすいように実際の山の地図で見てみましょう

出典:国土地理院(https://maps.gsi.go.jp/index_m.html#14/35.507182/138.431082/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1)
色加筆:筆者
山の山頂に高気圧、川に低気圧を配置しそこから伸びる方に気圧の尾根と谷に見立てた線を引いてみました
ではもう一度最初の天気図を見てみましょう

出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)
色加筆:筆者
どうでしょうか?
なんだか天気図が地形のように見えませんか
ちなみに山も気圧も等間隔で線が引かれていますが、名称は山が等高線、天気図は等圧線です
気圧とは?
そもそも気圧とは何か?
気圧とは空気の重さです
全ての物質に重さがあるように空気にも重さがあります。空高く伸びる空気の重さがその真下の地上に重さという力でかかっておりそれが気圧です

気柱(空気の柱)の総量が地上に乗っており、その重さは約10トンです
普通に考えれば生き物はその重さに耐えられなさそうですが、同じ力で体の中から外へ押しているので大丈夫です
また標高の高い山頂は上に乗っている空気の量が少ないため気圧は低くなります
もう一度、天気図の画像を見てみましょう

出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)
色加筆:筆者
高気圧は1042hPa、低気圧は984hPaと書いていますので「高」の表示があるところは周囲より空気が重い、「低」は軽いということになり、その地点を出発点として気圧の尾根と谷の線が伸びています
気圧の高低が発生する理由
空気は水平方向(風)や鉛直方向(対流)という形で絶えず動いています
※高度が高くなるほど動きは鈍化します。対流圏(約16km未満)ほど活発です
空気が自由に動きまわるために気圧が高い場所、低い場所が生まれます
その理由は主に2つあります
- 上昇気流と下降気流
- 空気の温度変化
1.上昇気流と下降気流
気圧は地上にかかる重さと説明しましたが上昇気流では地上気圧が低くなります
これは上昇気流で中心気圧が低い低気圧をイメージするとわかりやすいと思います
下にかかる力が上に向かう力(上昇気流)で相殺(打ち消し)されるということです
逆に下降気流である高気圧は下にかかる空気の重さに加え、下降気流で空気が下に向かいます
そのため地上気圧が上昇します
高気圧に関して別の記事でも書いてますのでご覧くださいませ
2.空気の温度変化

空気は温められると軽くなります
(空気の体積が大きくなり密度が小さくなる)
セミが鳴く夏の猛暑のときに太陽光で地面が温められると地面付近の空気は軽くなります、そして軽くなった空気は上昇(このとき地上気圧が下がる)し積乱雲になり30分くらい激しい雨が降ったりします
上昇する理由は主に4つあります

- 山の斜面に風が当たりジャンプ台のように上昇
- 風と風が衝突し上に上昇
- 暖かい空気が冷たい空気の上に昇る(前線)
- 地面が温められ空気が軽くなり上昇
そして冷やされた空気(冷たい空気)は重たくなり地上気圧が大きくなります
冬の天気図を見てみましょう

出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)
色加筆:筆者
真冬の天気図になります
中国東北区(画像左上)のエリアでは放射冷却(地表の熱が空に逃げて地面が冷える現象)により地表面がキンキンに冷えています。その結果、地表付近の空気は冷やされ重くなり高気圧(シベリア高気圧)が形成されます、シベリア高気圧は地表付近にできる背の低い高気圧です
ちなみに上記の画像は冬型(西高東低)の気圧配置であり大陸から吹く風により日本海側は雪が多くなります
このように空気の温度により地上気圧は高く低く変化します
透明な山の正体とは?
気圧の尾根や気圧の谷は山の用語で呼ばれていますが実際に山や谷の形ではありません
理由は気圧というのは地上から大気の上端までの空気の総量なので立体では見えません
ですが天気図と山の地形図を平面で見比べたとき天気図に等間隔で引かれた線の等圧線と山の標高に引かれた等高線が似ているために気象用語で尾根と谷が使われているのだと思います
実際に天気図に色を塗ってみましょう
加工前

出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)
加工後

出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)
色加筆:筆者
等圧線に沿って色を塗ると天気図が地形図に見えますね
この青線を「気圧の尾根」と呼んでいます
そして空気は気圧の高いところから低いところに流れます(水平の場合は風)
つまり空気の高低の傾き(気圧傾度)を解消しようと空気が尾根から谷に流れ込み、谷に集まった空気の行き場がなくなり上に向かいます(上昇気流)そのため、気圧の谷が西から接近してくると天気が悪くなります
気圧の尾根は逆に下降気流なので天気は良くなります
上空にある気圧の尾根
先ほどお話しした通り、実際の気圧の尾根や谷は平面図のみ地形のように見えます
そして気圧の尾根や谷は上空にもあります、地上の平面がそのまま上に上がったと思えばわかりやすいかもしれません
では実際の天気図を見てみましょう

出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)
色加筆:筆者
こちらは2026年2月28日の気圧配置になります
気圧の尾根と谷があります
ではここから上空の気圧配置を見てみましょう
高さは約1500m、3000m、5500mくらいになります
高層天気図では注意点が2つあります
- 高さは日本周辺の同じ気圧を結んだ等圧面高度になります
- 高層天気図では尾根と谷の呼び方が変わる
| ー | 線の名前 | 尾根、谷 |
|---|---|---|
| 地上天気図 | 等圧線 | 尾根、谷 |
| 高層天気図 | 等高度線 | リッジ、トラフ |
地上天気図の高さは地上なので線は気(圧)を等しく結んだ線になり、「気圧の尾根」「気圧の谷」と呼びます
高層天気図の高さは特定気圧面と呼ばれる高さで作成されます、その気圧は下層から850hPa(約1500m)、700hPa(約3000m)、500hPa(約5500m)です
高層天気図の高さに関しては内容が少し難しくなりますので割愛させていただきます
ですが等圧線に使われていたhPa(ヘクトパスカル)に対し等高度線は標高と同じメートルなのでより地形に近いためイメージがしやすいと思います
そして地上では「気圧の尾根」と呼んでいましたが上空では「リッジ」に変わります。高層天気図では気圧の尾根とは呼びません
同じく地上では「気圧の谷」と呼んでいましたが上空では「トラフ」と呼びます。しかし高層においてトラフのことを気圧の谷と呼んでも構いません
それではもう一度、地上天気図から順番に見ていきましょう

出典:気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/index.html)
色加筆:筆者
地上の気圧配置は中国に背の低いシベリア高気圧があり、三陸沖に低気圧があります
そして日本の東海上の温帯低気圧、南には停滞前線があります
基本的に前線は気圧が低いので気圧の谷になります(前線と重なり見にくくなるので線は引いていません)
また、カムチャッカ半島から南に気圧の尾根が伸びています
以上を踏まえて高層天気図を見てみましょう
次に850hPa(高さ約1500m)

高さ約1500mの上空ですが空にも気圧の尾根(リッジ)と気圧の谷(トラフ)があります
そして線はhPa(ヘクトパスカル)から1500mに変わっています
ちなみにヘクトパスカルは1000、1004、1008、・・のように4ずつ線が引かれています
またメートルの方は1500、1560、1620、・・のように60ずつ線が引かれています(ただし300hPaは120mずつ)
次に700hPa(高さ約3000m)

高さ約3000mの天気図です(富士山の7〜8合目)
リッジとトラフの線を引きました
気圧配置は地上天気図に比べ概ね同じように見えますが少し変わっています
トラフ(気圧の谷)は地上の寒冷前線や停滞前線に対応しています
次に500hPa(高さ約5500m)

500hPa(高さ約5500m)です
リッジやトラフの線は同じく引くことができます
高度5kmともなると地上天気図に比べて気圧配置は大きく変わり、地上に比べ曲線が緩やかになりました
また地上天気図の中国にあった高気圧は背の低い(高度が低い)シベリア高気圧だったため1500mの高層天気図では「H」のマークが無くなり不明瞭になっています
まとめ
いかがだったでしょうか?
内容をまとめると
気圧の尾根とは線で表現され低圧部と低圧部の間の気圧の高い場所(尾根もしくは稜線)を結んだ領域を指します
下降気流であるため気圧は高くなり、雲は消え天気は良くなります
そして上空にも存在しますが呼び名が「気圧の尾根」から「リッジ」、気圧の谷の場合はトラフに変わります
ということになります
記事を書きながらお話ししたいことがたくさんあってついつい話が脱線しそうになりながら軌道修正をして書いていました
この記事をきっかけに天気に興味を持って頂いたり少しでもお役に立てたら嬉しく思います
最後まで呼んでいただきありがとうございました!





